【WAVERIDER/岩谷啓士郎×LOSTAGE/五味岳久・アナログリリースンタビュー】 2年後の『In Dreams』

  Jacket photo by タイコウクニヨシ


始まりのこと

―お二人が一緒にお仕事されるようになったきっかけをお聞かせいただけますか?

五味:「最初に俺がちゃんと会ったんは、岩城が連れてきたというか。奈良に引っ越してくる前に。」

岩谷:「そうですね。」

五味:「僕らはNEVER LANDってライブハウスで『Echoes』ってアルバムを録音してて。そんときStudio MORG自体はあったんすけど、僕

ら使ってなくて。場所だけNEVER LAND借りて、東京の上條ってそのアルバムのエンジニア、そいつに東京から機材も持って来てもらって。で、ライブハウス使って録音してたところに、啓士郎くんが来たというか、岩ちゃんが連れて来たんやったっけ?」

岩谷:「そうですね。それまで僕、10年ぐらい東京に住んで仕事してたんですけど、関西に引っ越そうかな、みたいな感じの時期で。岩城さんとは元々、僕がサポートやってたACOっていうシンガーソングライターの方と仕事してるときに、一緒に演奏とか仕事はしてて。で、岩城さんが奈良から通って、そういう仕事もしてるのを見て、それはすごいヒントになって。」

五味:「ゲーム仲間じゃないの?岩城とは。」

岩谷:「最初は、最初はゲームじゃないです(笑)。」

―あははは。

五味:「ゲームばっかり一緒にやってるイメージで。」

岩谷:「言うてもそこまで・・・(笑)。」

五味:「あんときもう、奈良って決めてたん?」

岩谷:「一回ちょっと行ってみようと思って。物件とか見がてら。多分、2泊ぐらいで滞在してて。ちょうどレコーディングやってるって聞いて。」

五味:「そうそう。ちょうど現場来てもらって。で、俺ちゃんと喋ったんそん時とかちゃう?その前から存在は岩城に聞いて知ってたんやけど。」

岩谷:「でも僕ライブは見てるんですよね、その前に。何回か見てるけど、岩城さんしか喋ったことなくて。」

五味:「その日に一緒にラーメン食いに行って。」

岩谷:「彩華ラーメン。」 五味:「彩華ラーメン。」

―(笑)

五味:「それが2012年やから・・・7年前。」

岩谷:「そうですね。もうそんな経ちますね。」

―そうなんですね。

五味:「で、引っ越してきて、同じ街に住んでるから顔合わせるじゃないですか。それで仲良くなったみたいな。最初仕事でって感じじゃなかった。」

岩谷:「そうっすね。」

五味:「ちょうど僕らも、いつもやってもらってるPAとか専属のエンジニアとか、この人と毎回やるみたいな固定のメンバー的な人とかいなかったんで。近くに住んでるし、せっかくやったら一緒に何かやれたらいいなって感じで。やってもらったら、まぁ、はまって。これはいいぞって。その延長線上に今いるみたいな感じっすね。」



制作秘話

―ちなみにこの『In Dreams』はもともとアナログを発売しようと思って作られたんですか?

五味:「今まで、セルフタイトルで3人になってからは毎回アナログ切ってたんで、今回も出すつもりではいたんすけど。何かCD出したらそこそこ反響もあって、それなりの枚数出て、忙しかったこともあって。あと、どういう形態で出すのがベストかみたいなの色々考えてたら、すごい時間空いてもうて。

どっちかっていうと、CDで結構・・・何やろ、満たされたじゃないけど、反響が良かったんすよね。CDがガーっといったんで、そっちに結構エネルギー使ってしまって。取材とかも多かったし。レコード出しそびれてたな、みたいな。

で、落ち着いてきて、どうせ出すんやったらやっぱいい音で。レコードって、1枚に長く入れると音悪くなっていくんで。せっかく出すんやったら、MAXでいい音でっていうの考えて、2枚組。ちょっとお金もかかるんすけどね、2枚組にすると。」

―このアナログのロットナンバーは手書きで書かれてますよね?

五味:「そうですね。最初別に何も考えてなかったんですよ。ポストカードみたいなんが入ってるんで、せっかくやったら書くか、と思って。CD頑張って手売りで売ってたし。」

岩谷:「その辺の数の感覚がちょっとね。発送作業によって崩壊してる感がありますよね(笑)。」

―あははは(笑)。

五味:「1000枚作ったんで。1000枚やったらまあいけるな、と。一日100枚やったら10日か、みたいな。計算したら。」

二人:(笑)

五味:「ちょうどその前に、Ropesのレコード出したんですよ。そこに、ダウンロードカード入ってるんですけど。まあ僕も気大きなってるんで、これ普通に出しても面白ないから、ダウンロードカードに全部サインしてくださいっつって、二人に全部サインさせて。絶対そういうのついてた方が喜ぶからって。皆が買ったときに。それで二人とも、「やります。」って言って頑張ってやってくれてたんすよ。で、それゆった直後に俺なんもやらへんのまずいなって。」

二人:あはは(笑)。

五味:「俺もやろってなって、ナンバリング入れたっていう。手作業で手が加えられてるのが入ってたらやっぱいいと思うんすよね。モノ買う時とか。だから、通販ん時も一筆添えるようにしてるし。そういう、こう機械でバンバンて作ったみたいな・・・ま、レコードはそうやって作ってるんですけど。何かこう、自分が売るんやったらそういう何かを添えときたいなってのは、一番の理由ですけどね。」


―それでは、作品のことに移っていきたいんですが・・・。

五味:「まあまあ時間経ってるから、思い出しながら。」

岩谷:「2年前ですからね。ほんとちょうど2年前ぐらいにミックスをやってたんですね。」

五味:「録ってるときとか、ミックスんとき以外は、そこまでこの曲がこうでこうでみたいな話し合うこととかないな。」

岩谷:「まあ。そうすね。」

五味:「普段の音とか曲の感じとか、スタジオで簡単に録ったやつとか聴いてもらって、大体の方向性は啓士郎くんに決めてもらってますね。こういう音にしたいとかそれぞれあれば、その都度言いますけど。全体の曲とか、アルバム全体とかは、結構丸投げ。って言ったらあれですけど。

僕らは演奏とか歌ったりとか日常的にやってて、音については考えてるけど、全体をどういう風に混ぜるかとか、聴かせるかとかは、プロに任せた方がね、良くなると僕は思ってて。

あんまりこう、こっちで細かくは・・・。もっとベース上げてくれとか、他のバンドがどういう感じか分かんないすけど、もっとこうして、もっとこうしてって皆がそれぞれ言うともう、結果良くないっていう(笑)。」

岩谷:「(笑)。」

五味:「感じしかしない(笑)。僕は。」

岩谷:「全員が上げくれっていうと結局同じバランスに(笑)。よくある、笑い話ですけどね。ふふ。」

五味:「曲作ってる人とか演奏してる人って、もうその曲を完全に客観的には聴けないんで。中に自分がいるから。だから、第三者の意見とか、第三者の感覚っていうのを優先してもらった方がいいんじゃないかなっていう気持ちではいますね。そのためのエンジニアだと思うんで。」


―岩谷さんがメールインタビュー(※後日公開予定)の中でbachoとのスプリットの時は、最終的にbachoに寄せて仕上げたというお話をされてましたが、LOSTAGEをミックスする方向性みたいなものが岩谷さんの中にあるんでしょうか?

岩谷:「方向性というか、単純に音の・・・具体的に一番違ったのはドラムの音の感じなんすけど。」

五味:「まあ、そこはアコースティック楽器っていう。」

岩谷:「人によって違いが一番出てくる部分なので。そこは誰かの同じセッティングに合わせても、合わない部分が出てくるなっていうのはありましたね。LOSTAGEの音は、ちょっとこう、面できてるというか。bachoはこう、点がはっきりしてるっていう。そこをどっちに、どの部分で落としどころをつけるかっていうのは結構迷いました。」

五味:「分かるわぁ。その面と点、っていうとこ。分かるけど・・・多分、バンドの音知ってへん、読んだだけの人は分からへんと思う。」

二人:「ははははは(笑)。」

五味:「ライブとか見てたら分かるけど。」

岩谷:「そうですね(笑)。」

―面と点って例えばどんな感じですか?

五味:「曲ごとにどうとかっていうよりは、出てる音の、音の出方っていうんですか。」

岩谷:「そうそうそう。」

五味:「bachoは、そうですね、語弊があるかもしれないんですけど、でこぼこしてる。僕らは多分、バーンってなってるんすよ。」

岩谷:「(笑)。」

五味:「どっちがいいとかじゃないすけど、壁、みたいな。壁の素材がレンガなのか、それともコンクリのブロックなのかみたいな。」

―なるほど。

五味:「どっちも同じ強度であっても、佇まいがやっぱ違うじゃないすか。そういう印象ですね。」

岩谷:「人数もあると思うんですよね。3人と4人ていう。3人になってから結構そういう物足りなさみたいな、4人のバンドに負けない迫力みたいなのを、意識的にも無意識的にも、多分すごい試行錯誤してやってきた部分が今の音になっているっていうのはありますけどね。」


―『In Dreams』のレコーディングを始めるにあたって、岩谷さんは最初に曲を一気に全部聴かれたんですか?どんな感じですすめられたんでしょうか?

岩谷:「曲によって違いますね。しかも、これ・・・」

五味:「ぶっちゃけるとな。」

岩谷:「2回に分けてる・・・。」 五味:「そうそう。2回に分かれてる。」

―ええ!そうなんですか?

岩谷:「もともとは、フルアルバムじゃなくって・・・。」

五味:「そうそうそう。」

―え、そうなんですか!?

五味:「今となっては別に結果オーライなんですけど。」

岩谷:「別に隠してるわけではない。」 五味:「そう、隠してるわけではない(笑)。」

岩谷:「ははは(笑)。」

五味:「でも、よっしゃアルバム作るぞって感じで作ってたわけではないんすよ。実は。何となくまとまった感じになってますけど。」

―すごいまとまってるなーと思ってたんですけど。

五味:「どの曲やったっけ?」

岩谷:「多分、『泡沫の』『戦争』『I told』『Shoeshine Man』かな。この4曲。」

五味:「後半、『僕のものになれ』以外。」

岩谷:「これは多分、他の曲を録る1年ぐらい前に録ってるんすよ。NEVER LANDで。」

―そうなんですね!

五味:「リリースの予定があって、で、色々あって流れて。でも曲は気に入ってるし。どうせ出すんやったらミニアルバムよりは、曲足してフル尺にして出す方がいいんじゃない?ってなったと思います。確か。」

―すごいまとまってるから、もうアルバムとして作ったんだとばっかり・・・。

五味:「俺もまとまってて、その事実を自分の中で消し去ろうとしてました(笑)。」

岩谷:「そうですね。そうそう。」

五味:「でも今思ったけどその時点で4曲出したら、だいぶ地味な感じやな。良かった。アルバムにして。」

岩谷:「で、残りの曲はMORGで。」

―そうなんですね。東京の方のcatapult studioの名前もクレジットに入ってたと思うんですが・・・。

五味:「それは最後の方・・・。」

岩谷:「『REM』かな。『REM』の歌録りだけ残ってて・・・。」

五味:「ああ、あれもや。『泡沫の』と『窓』のコーラスも。」

岩谷:「『窓』のコーラスね。」

五味:「ややこしかったやつ。」

岩谷:(笑)。

―ややこしかったんですか(笑)?

五味:「歌録りがちょっと残ってたんで、東京のスタジオに僕単独で行って、歌入れさしてもらって。そんな大きいとこじゃないんで。何か、楽器がっつり録ってというよりは、ほんまに歌録ってミックスみたいな。」

岩谷:「そうそう、ダビングとミックスみたいなスタジオで。」

五味:「で、やってるとこに、そのおとぎ話の前越っていうやつと、まさるっていうシンガーソングライターの島崎大っていう友達が、遊びにというか応援しに。」

―呼ばれたわけじゃないんですね。

五味:「あれ呼んだっけ・・・。まあ、僕があいつらを呼ぶことはない・・・ですね、多分。」

二人:「あははは(笑)。」

岩谷:「いや、ハーモニカは多分・・・。」

五味:「あ、そっか。ハーモニカは、吹いてよみたいな。そいつ弾き語りでハーモニカ吹くんですよ。じゃ、呼んだか。うん。呼びました。」

―(笑)

岩谷:「前越くんは、遊びに来たね。」

五味:「遊びに来たな。まさるについて来た。で、せっかく来たし、ハーモニカのついでにコーラスもやってみてって。結果でも、良かったな。」

岩谷:「コーラスの時は多分、完全に酔っぱらってましたけどね。」

―あははは!

五味:「(笑)。むちゃくちゃ、もう、ビールの6個缶ばーっ持ってきて(笑)。ずーっと飲んでたもんな。」

岩谷:「コーラスっていうか、半分野次みたいな感じの。(笑)」

五味:「最後ぜんぜん帰ってくれへんしな・・・。」 岩谷:「そうそう。」

五味:「もういいからって(笑)。」 岩谷:「あれね(笑)。」

五味:「このアルバムに関しては、NEVER LANDも、MORGも、catapultも全部使いましたね。」

―コーラスの野次みたいな感じ全然分からなかったです。(笑)

五味:「それもミックスでこう・・・。」

二人:(笑)

岩谷:「野次っていうか、何かもう、歌い方がなんかね。酔っ払いのこの・・・。」

五味:「こうやって肩組んでコーラスしてたんすよ。マイクの前で。」

岩谷:「そうですね。『窓』のバックに入ってる。」

五味:「サビらへんのバックか・・・。結果でも良かったですね。」

岩谷:「そういう人達が今増殖して、ライブで歌ってますからね。」




作品としての『In Dreams』

―『ポケットの中で』を最初にライブで聴いたとき、最初の部分どういう出し方で出してるんだろう?と思ってたんですけど、ギターで出してるのを見たときにかっこいいなあと思って。拓人さんのギターってどんな音でも出るんじゃないか、みたいな感じがしますよね。

五味:「いやいや出ないすよ。3つぐらいの音しか。」

岩谷:「(笑)。もうちょっと出ます(笑)。」

五味:「『ポケットの中で』は、最初のギターの音がテッテッテって3で入ってきて、その後リズムが4で入ってきてみたいな。ま、よく使うんすけどね。あ、っぽいなみたいな感じ、ですね。自分、ぽいなっていう。」

―気に入ってる曲とかアレンジってありますか?

五味:「どの曲が気に入ってるとかは、俺そんなないかも。まぁでも最後の曲かな、質感的に。あんまりライブでやってないですけど。」

―色んな音が入ってますよね、『Shoeshine Man』。

岩谷:「これに関しては、結構色んなね。」

五味:「コーラスとかも。」 岩谷:「ピアニカも入ってる。」

五味:「ちょっと、何かAOR感というか。最近、シティポップとか流行ってるじゃないすか。ああいう要素も入れとこかって。ははは(笑)。」

岩谷:「本当に?(笑)」

五味:「まあ、ほんまにそういう感じではないけど、何かこうどっかにはあった気がする。何かやりたいんすよ。新しく・・・新しくはないすけど、AORとかずっとあるし。自分がやったことない感じとか音の質感とか、入れていきたいんすよね。

さっきの客観的に聴いてもらうとか、ミックスを任せるとかもそうやけど、自分やったら出来ないことやってほしいなっていうのあるから。昔のやつとか聴き直してても、こういう自分だけやったら出来ないような曲とかミックスとか、アンサンブルとかが入ってると、“おっ”てなりますね。自分的には。」

―『Shoeshine Man』はドラムの音とかもすごい繊細で綺麗な感じで聴こえて、『僕のものになれ』に続いて綺麗な曲が並んでるんですけど、『僕のものになれ』の方は割とシンプルに綺麗で『Shoeshine Man』は重なりとかが綺麗で、対比がある感じが2曲並んでてもすごくいいなあと思ってて。

岩谷:「『僕のものになれ』は、結構録る前からライブでもやってて。」

五味:「あんまやらないんすよ、僕ら。録る前に。」

岩谷:「でも『戦争』と『泡沫の』と『僕のものになれ』は結構やってたんですよね。で、『僕のものになれ』に関しては、ライブで聴いてた印象が強くて。それを出来る限りいい感じで音源に落とし込みたいなっていうことはあって、そういう方向でやってましたね。」

五味:「啓士郎くんにやってもらうようになってから、歌が聴き取りやすいというか、歌の良さみたいな。僕が自分で言うのもあれですけど。歌は他の楽器と、おんなじじゃないんで、多分。そのへんのバランスがすごいいいなって思いますね。

昔は結構、演奏に対して歌の立ち位置というか、配置が埋もれてる方、埋もれてる方へ。ちょっと誤魔化して。聴き取りにくかったり、意味が分からないとか。照れ隠しなのかもしれないですけど、自信もなかったし。あんまりこう、歌がバンって入ってくる感じにしたくなかったんで。でもここ何年か、それこそ啓士郎くんと一緒にやるようになってから、この歌はいいから聴かせます、みたいな。この歌詞はいいから分かってもらう、みたいなことまで汲んでやってもらってるような感じはしますね。」


―『ガス』と『戦争』は不穏な感じの音が印象的で、どういう風に録られたのでしょうか?

岩谷:「『ガス』に関しては、多分メンバーからの要望で、1番終わりのドラムだけになるとこ、あそこに何かやってほしいっていうのを言われて。そこはディレイに色々フィルターかけたりとかして、個人的にはガスが漏れ出してる感じなんですけど。(笑)。色々試してやった感じはありますね。あと、これずっと、オクターブ下のボーカル重ねてる。『ポケットの中で』とかもそうですけどね。そこの混ぜ具合とか結構気にしてましたよね。」

五味:「意外と歌やってたな、そういえば。」

岩谷:「意外とね、色んな技、入ってるんすよ。(笑)」

五味:「そう、思い出した。」

岩谷:「ボーカルに関しては、結構色々、アイデアを出して。」

五味:「例えば、このメロディーやったら、上のコーラスがあって、下にオクターブ下のメロディ、同じように歌ってとか。メインのやつも、何回か歌って重ねてもらうとか。そういうのは、素材として思いついたやつ全部やってみて、いるやつといらんやつを選んでもらうっていう。基本、使う使わないのジャッジは任せてるんですけど。こういうのがあったら、何か使えるのかなっていうので素材だけ用意してきてる感じですね。」

岩谷:「結構そういうのは、各曲ね。色んなアイデアを出してますね。」

―『I told』や『さよならおもいでよ』はギターに厚みがありますが、どんな風に録られたのでしょうか?

岩谷:「ギターは同じのを2回弾いてもらったりとか、歪んだギターとかよくやるテクニックなんですけど。で、盛り上がるところで左右に音像を広げて、とか。」

五味:「意外とあの人ギター重ねるよな。いっぱい。」

岩谷:「うんうん。そうそう。」

五味:「ライブやと、3人でばーっとやってるんすけど。意外とね、どの曲も結構弾いてる。」

岩谷:「基本そうすね。」

五味:「1本だけっていうのは、ないんじゃないすか。逆に。大体どっかでバッキングとソロになったりとか、バッキングとオクターブとソロになったりとか。啓士郎くんもギタリストなんで、ギターの音作りに関しては二人でこう、コソコソやってますね。」

岩谷:「コソコソ(笑)。」

―(笑)

五味:「もう、僕とか岩城は・・・岩城って大体最初に録音終わるんで。ドラムやから。」

岩谷:「そうそうそう。」

五味:「後半いない、みたいな。あともうお前ら録れ、みたいな感じで。」

岩谷:「そうそう、そうっすね(笑)。」

五味:「僕は大体なんとなくいるんすけど。歌詞考えたりとかもしてるし。大体ドラムが終わって、ベース終わって、ギターが終わって、歌が最後に残るみたいな感じで。コーラスとウワモノと。

ギターの時は啓士郎くんと拓人が二人で何か、音の作り、一回録ってみてもうちょっとこうして、みたいな話してますね。結構細かくやってくれてます。いつも。」


―特に印象に残ってるやりとりってありますか?

岩谷:「『REM』のギターソロの音色は結構何か、これにしたい、みたいなのが拓ちゃんの中にあって。それに近づけようと試行錯誤したのはありましたね。」

五味:「作りの段階で?」

岩谷:「音作りの段階で。あと、『ガス』のギターソロみたいなところは、あんまり逆に歪ませない感じで・・・。」

五味:「ああ、そうやんな。」

岩谷:「そうそう、ちょっとスパニッシュっぽい感じの。(笑)。」

五味:「サクサクした音。」

岩谷:「が、かっこいんじゃないかって言って。」

五味:「あれ、良かったんすよ。」

岩谷:「そうそうそう。結構、上手くはまったなっていう感じしましたね。」

―なるほど。

岩谷:「あと、岩城さん、このアルバムに限ったことじゃないんですけど、テイクやるじゃないですか。普通はシンバルとか最後ジャーンて鳴らして、余韻がなくなるまで音鳴らさないようにするんですよ。でも自分の中でもう一回やなって思ってたテイクは、最後のシンバルが伸び切らないうちに他の音を出し始める。(笑)」

五味:「余韻を消すかのごとく・・・。」

岩谷:「そういうサインを出してくる(笑)。」

五味:「基本、あの人のジャッジやからな。」

岩谷:「そうそうそう(笑)。結局ね(笑)。もっかい、みたいな。」

―(笑)

五味:「録り方としては、3人で一斉のってやって。」

岩谷:「クリックとか使わないすね、大体。メトロノーム聴きながらやったりするバンドも多いんすけど、LOSTAGEに関してはほとんど。」

五味:「そうっすね。結局使っても、嫌やな、みたいになるんで。たまーに使うぐらいで。3人でぱーっと録るんすけど、まずは。で、ギターとかベースは間違えたところを後で。それぞれ別のブースに分かれてたりするんで、音が被らないように。ドラムは結構、部分的にやり直すの・・・まあ、できるっちゃできる?」

岩谷:「できるっちゃできる・・・。でもあんまり、やりたがらないすよね。岩城さんね。」

五味:「つるっといいテイクが、岩城が、録れればOK。僕らは間違えても直せるんで。」

―なるほど。

五味:「岩城がいいテイクでやるために、演奏してる、みたいなとこある。」

二人:「ははは(笑)。」

五味:「早いですけどね、あの人。」

岩谷:「そう。早いですね。すごいと思います。」

五味:「大体、そうすね、ベーシック録るの3、4回やっていいの使う、みたいな。基本。」

岩谷:「そうそうそう。それ以上やっても変わらんでしょ、みたいな。感じもありますよね。」

―へええ。

岩谷:「本当、3、4回ぐらいですね。2回くらいのときで終わるときもあるし。」

五味:「一応ある程度、普段スタジオで練習はやってるんですけど。でも、多分、結構適当に叩いてるとこあるよな。」

岩谷:「いやいやいやいや。」

五味:「ない?」

岩谷:「それはこの前の『Guitar』とかの時に岩城さんと話してたんすけど。歌ができてない状態で、ベーシックを録ってるって状態があって。」

五味:「ああ。」

岩谷:「フレーズとかも追い込み切れないから、結局音源になったやつとライブでやってるやつが、何か違うものになってしまうのがちょっと気になるみたいなのは言ってて。」

五味:「今回はないか。」

岩谷:「そうそう、多分。今回は。」

五味:「歌が決まってない。俺が決まってないってことか(笑)。最終的に。」

岩谷:「(笑)。何かそれを話し合って、ちゃんとそこまで詰めた状態で今回やれてるってのもありましたね。」

五味:「そうやな。時間かかってんもんな。」

―『In Dreams』のアルバムタイトルについては、五味さんが自分がやりたいことを詰めこんだ作品とおっしゃってたと思うんですけど、それとは別に、曲、1曲1曲が色んな人が見てる夢みたいな雰囲気もあって、タイトルがはまってるなあと思って聴いてました。」

五味:「タイトル、最後に決めたんかな?」

岩谷:「最後に決まったような気がしますね。」

五味:「何かまあ、4曲先にあって、その後アルバムに何曲足したっけ?」

岩谷:「6曲ですかね。」

五味:「作った時期はバラバラなんすけど、後で書いた歌詞を並べてみたら、結構、“夢”って言葉が出てきたりとか。曲の、歌詞の世界観とか自分でゆったらあれですけど、その言おうとしてるような雰囲気とかが“夢”っぽかったりとか。全体的にそういう流れというか、統一感というか、雰囲気があったんで。“夢”をテーマにした作品て分かるように『In Dreams』になったんすね。多分、ほとんどの歌詞に“夢”って出てくるんすよね。結果的にそうなったというか、途中から歌詞作り出していくときに、アルバムコンセプトじゃないけど、それを歌詞に入れたりとか。バランスとっていった感じっすね。」

―タイトルは録る前にできた訳じゃないんですね。

五味:「そうですね、録りながら、歌詞書きながら。後半、ほんま出来上がる直前ぐらいですよ。録音始まってたんちゃうかな。録音しながら決めたんすよ。」

岩谷:「だったと思いますね。」

五味:「自分らのやりたいこと、好きなようにやって。確か後半ミックスやってる時にはもう、売り方もこういう売り方でいく、みたいに決めてたと思うんで。メンバーとも話して。何でまあ、これで上手くいったら、夢、あるなあ、みたいな感じを込めつつ。

自分のやり方とか、自分らの作品とかが、誰か俺もやってみよ、みたいな。何か一個の基準ていうか、目標みたいなもんになればいいなっていうのはずっとあるし。そういうやり方を打ち出すための、アルバムやなって思ってたんで。タイトルもちょうどええんじゃないかなって。夢のある作品にしたかったというか。」



サウンドチェックという時間

―以前当サイトでインタビューしたPetalがサウンドチェックのことを“Sacred Time”て言っていて印象的で。‟Sacred”って「神聖な」というような意味があるので「誰も入ってこれない自分だけの時間」みたいな意味合いだと思うんですけど、お二人にとってはサウンドチェックってどんな時間ですか?

五味:「単純に本番を、お客さんを前にして、そこで一番いい音出すための準備の時間ですかね。神聖ってそんなスピリチュアルなものは、僕に関してはないというか。そこに向けて調整してるだけなんで。

人が聴いてるときに、その人に一番いい音で、自分の作った音を聴いてもらう、準備をする時間。なんで、しっかり欲しいし。サウンドチェックの時間は。」

岩谷:「ね。」

五味:「それがないとなると、ちゃんと出てんのかなとか、不安も拭いされない。」

岩谷:「そうですね。」

五味:「なくてもやれますよ。ライブは全然やれますけど、そん時、その状況で出せる一番いい音かどうかは分からない。努力はしてますけどね、皆。なくても。どっちでもいいよって言われたら、絶対やるって言うし。ファンダンゴのこないだの7日間も毎日やってたし。それはほんまやらんでいいんちゃうかって途中で思ったけど。」

二人:(笑)

五味:「毎日、ちゃうから、みたいな。やる曲も違うし。そもそも気候も違うかも、みたいな。」

岩谷:「あはははは。」

五味:「無理やりな。早めに集まって皆やってましたよね。」

―すごい。

五味:「結果、毎日ええ音なっていったなっていう感じが自分でもあったし。」

岩谷:「微調整しながら。」


―そうやって出す音に拘っているから音が心に響くのかなって思いました。舞台音響とかもサウンドチェックを大事にしていて迫力があるから、それと似た凄みがLOSTAGEのライブには感じられるなあ、と。音が毎回、研ぎ澄まされていっているような感じですよね。これまでのキャリアを通して、何か音が良くなっていったきっかけとかってあるんでしょうか?

岩谷:「何かこう、何かの出来事があって、ということは基本的にないかなと思ってて。」

五味:「劇的に変わったというよりは、日々の積み重ねっすね。」

岩谷:「本当にそうですね。同じ会場で、先月やったところでもっかいやるみたいな機会も結構あるんすけど。今は卓もデジタルが多いのでデータがそのまま残ってて、全く同じ状況作れるんですよね。でも、それをあんまりそのまんま使うってことはなくて。

サウンドチェックのときに本人達から出てる音も先月とはまた違うし、僕の耳もまた違うし。そういう意味では毎回、それはちゃんと自然にやるもんだなというか、やります、という感じでやってはいますね。それは楽しくもあるので。」

五味:「練習みたいなもんすよ。普段の練習もやっぱやればやるほどね、上手くなるし。バンドの一体感とかも増すじゃないすか。それをPAの啓士郎くんを含め一緒に。ライブは練習と比べれば数も少ないですから、やればやるほど一体感は増していくというか。積み重ねてきた時間とかじゃないですかね。」

―以前、何かで五味さんが岩谷さんのことをメンバーの一人のようなものという話をされてましたよね?

五味:「僕らの関係性というか、普通はアルバムとか録る人と、ライブの音響担当の人って、違う人がやってるんすよ。同じ人が全部やるって中々ない。」

岩谷:「そうですね。」

五味:「ま、いるかもしれないですけど、あんまない。啓士郎くんは他のバンドの録音やって、そのまま音響やる場合も結構あると思うんですけど、そういう感じでやったりしてる人ってあんまりいないんで。こういう風に聴かせたいとか、この曲はこういう曲だっていうところまで全部、面倒見てくれてると僕は思う。

だから、ライブでやってても、この曲はこういう風に聴こえてるんやろうなっていう信頼関係。もちろんライブでしかやらない人も事前に音源聴いてチェックして、それに近づけてくれる人はいると思うんすけど。それより前の、それこそスタジオで僕らがこういう曲にしようって作ってるところから知ってる人が出してる音なんで。信頼関係は誰よりも、ね、強いというか。分かってる感というかね。そういうのやっぱり大きいなってありますね。」

―なるほど。

五味:「やけどその、外に出てる音、僕らは聴けないんすよね。」

岩谷:「そこはね、永遠のテーマですよね。」

五味:「実際どういう音が、客席に届いてるか僕らは分かんないすけど、お客さんの反応とか見てたらいい音かどうかっての分かりますしね。だから、ここ何年かの評判というか、ライブでの音の良さとか、はまり方とかはすごくいいですけどね。友達にしても、一見のお客さんにしても。音良かったってよく言われますね。」

―うんうん。

五味:「僕らが出してる音とか、普通ですよ。」

岩谷:「いやいやいやいや(笑)。」

五味:「普通てか、ロックバンドが出すいわゆる、自分らで出来るいい音の範疇でやってるから。」

岩谷:「いや結構、出てる音も結構・・・」

五味:「悪くはない?」

岩谷:「悪くはない(笑)。」

―(笑)

五味:「俺も悪くはないと思いますよ(笑)。メンバーの音も、自分の音も。」

岩谷:「正直でも8割ぐらいは、バンドの出音なんすよ。」

五味:「あ、そうなの?」

岩谷:「そこがあってのっていうのは、もちろんあります。」


―ライブの音響をされるときに、初めて行く場所でやる時って難しいものですか?

岩谷:「そうですね。その場所によって本当に違うので。難しいときもあるし、全然やり易いなってときもあるし。本当に場所によりますね。それで、出来る限りこう、一番自分の出したい音になるように、調整していく感じですね。

具体的には、マイクは大体SHUREの、一番定番の、世界によく出回ってるマイクで。どこのライブハウスでもあるんで。それに自分の声で喋って、自分が思ってる音と違うものが出てきたらそこ調整していくっていう。よく自分が聴いてる曲とかかけたりして、その音チューニングしていってっていうプロセスですね。サウンドチェックの時間が無ければそれがままならないので、そういう部分でストレスになってくるっていうのはありますね。」

―音は、記憶してるんですか?

岩谷:「記憶してる、のかなあ・・・。まあでも、あんまりね、音の記憶力みたいなんは、実はあんまり自分では良くないって思ってて。あんまたくさん音色覚えらんないんすよね、僕(笑)。」

―そうなんですね!

岩谷:「そうそうそう(笑)。そうなんですよ(笑)。実は。」

五味:「難しいな、音覚えんのって。」

岩谷:「そう、得意な人もね、結構いて。羨ましいなっていつも思うんすけど。僕の場合は何かその、記憶してる音っていうよりかは、聴こえた音に対して違和感があればそこに対応していくって感じなので。記憶の中の音に寄せるっていうよりかは、その場で、自分が聴いていいってところに寄せることしか出来ないっていうか。」

五味:「でも、ライブハウスの形とかもさ、ちゃうやん。例えば、ファンダンゴとさ、CONPASSとかって全然、ハコの響き方とかも違うじゃないすか。反響とかも違うじゃないすか。それで毎回同じ音にすると、やっぱゆがみが出てくるから。」

岩谷:「そうですね。」

五味:「ファンダンゴの特性を活かしたいい音っていうものが、それぞれライブハウスにあるから。それはやっぱ、臨機応変にいいと思う音パッと選べる方が僕は、感覚的に自分も近いって思いますけどね。」

―演奏してても、やっぱり音の特性って感じるものですか?

五味:「やっぱハコが違うと、ここは、響くなあ、とか。そういうのは、リハの時に啓士郎くんとかとも今日は低音が良く回るからどうしようみたいなのとか。ドラムの音もうちょっと引き締まった音にしたいけどどうしたらいいかとか。そういう、やりとりは、しょっちゅうやってますけどね。」

―なるほど。

五味:「リハでやっても結局人が、お客さん入ると人の体って音吸い込むって言うじゃないすか。リハーサルと音、ちょっと聴こえ方違うとか。そこまで想定して、出てるスピーカーの音量ちょっと下げてリハーサルやってみたりとか。色々シュミレーション手伝ってもらって、何とかやってる感じっすね。

スピーカーの前で見てる人と、PA卓の前で見てる人と、スピーカーから同じ等距離のところで聴いてる人やったら、聴こえてる音まったく違うし。その全体のバランス見ながら音作るわけやから。」

岩谷:「そうすね。出来る限り色んなとこで聴いても、同じように聴こえるようにしたいな、とは思ってますけどね。」

五味:「面白いすね。でも、それがライブの面白さというか。飽きないすね、やってて。」



2年後の『In Dreams』

―『In Dreams』が発売された当時、音楽を取り巻く環境に閉塞感のようなものを感じていて、『In Dreams』のリリース方法は、閉塞した状況に風穴を開けるような出し方をされたことがすごく印象的でした。そうしてこの作品に心を動かされた人達が、MVを作ったり、口コミで広げたり、音源を買ったりして、2年経った今、“皆が見てる夢”みたいな作品になったと思うのですがお二人にとってはいかがですか?

五味:「これね・・・。2年経ったけど、今だにCDとか注文くるんすよね。で、現在進行形でいいと思って見つけて聴いてくれる人とか、そんとき僕が書いたブログとかね、何かの取材記事とか読んで気付いてくれたりとか。誰かに聞いてとかかもしんないすけど。

何かね、最近の音楽とかと比べるのも、ちょっと無粋かもしれないすけど。使い捨てられずに、生き残ったなあっていう。僕らのあの出し方が、別にものすごく新しいもんやったかって言われたら別に、普通のインディーズのロックバンドが手売りでデモ売ってんのと一緒みたいな感じやから。そのリリースの方法自体は、斬新やったかどうかっていうのはまあ・・・。」

岩谷:「むしろ基本に立ち返ってる・・・。」

五味:「そうそう、基本に立ち返って、原点回帰みたいな。ほんまに自分でやれる範囲で、自分で売るだけ、みたいな。それがこう、思った以上に取り上げられて話題にはなったんですけど。結局その売り方自体は、ものすごく自分の、気持ちのいい売り方というか。根本的なやり方に立ち返ってやって。


例えばCDを流通にのせて、全国のレコードショップで売りますってなると、最初にやっぱイニシャルっていって、初動を気にするんすよね。今週、何枚売れたとか、この日のデイリーランキング何位とか。で、最初の出荷数が何枚で、で、その後の展開は考えるとか。そういう、短距離走みたいな売り方で皆やるから。

でも、そういうの一切なかったんすよ。もう別にその日に売れようが、1ヵ月後に売れようが2年後に売れようが一緒なんで。僕らからしたら。そういうやり方に立ち返ったことで、何か自分の・・・、僕もやっぱイニシャルとか気にするようになってたから。何年もそういうやり方でやってきて。そういうところじゃない、音楽の売り方というか、伝え方のスパンというか。大事に売る、っていう。作ったものを、自分が。これからも売り続けていくんで、これ自体は。点で売らない、というか。線とか、面とかで売っていくっていう。伝えていくっていうのを、未だに感じながらやってるんで。そういう意味ではすごい大事なアルバムになったし、気づかせてくれたっていう。


僕も、こういう展開になると思ってなかったんで。そこそこ売れりゃいいかな、ぐらいの感じやったから。でも、意外とやってみたら、皆もその感じとか汲んでくれて、大事に聴いてくれてるなって。ライブとかでやっててもそう思うし。レコードを今このタイミングで出しても、やっぱり、このアルバムは好きなんでって手に取ってくれる人もいるんで。何かこう、こういうパッケージ作品をまとめれたのは、自分にとっても発見やったというか。まあ、振り返ってみたらそういうこと確認できて。次の作品にどう反映さしていこうかな、みたいな段階には来てるんすけど、結構その最近出た、みたいな感覚で今も扱ってるんすよね。店とかでも、ライブでやるときも。


これより後に、去年の末かな。Youtubeだけで1曲新曲出したんですよ。『In Dreams』出してそういう風に確認できたってことがあったから、ネットだけで新曲みたいなの出して、皆のリアクションとか返ってきたら、そん時何か自分に分かることとかあるかもなと思って。それで1回やってみようって皆で相談して。

やったけど、やっぱね、すぐ終わった・・・終わったっていったらあれですけど、曲自体はいいんですよ。ものすごくいい曲やと思うし、たまに、自分でも聴き直したりしますけど。ライブでもやってるし。何かこう、ものすごい勢いで消耗されていったなっていう感じがね、やっぱりするんですよ。その、マネタイズできるかどうかってことじゃなくて。だから何かこう、音楽をどうやって自分で大事にする、大事にする仕方というか。」

岩谷:「うん。」

五味:「ね。花とか替えるときの水のやり方みたいな。育て方とか。そういうことを考えるきっかけになったアルバムなのかなっていう風に、今振り返ってみて思いますね。これ、もし配信でやってたら、今日わざわざインタビュー受けるってこともなかったですし、2年後に。

このやり方で皆やれよってことじゃないんすよ。僕は何か、そこに違和感を感じながらやってたとこがあるんで。俺はこれやな、合ってるわ俺に、っていう。これやったら俺、5000人に手売りで発送とかでも全然しんどくない・・・ま、しんどいけど(笑)。」

二人:(笑)

五味:「イケるわって。それやったら、もっとやりたいって気持ちになれるし。そうですね、自分が一番こう、勉強さしてもらったなっていう。結局、買ってくれた人のリアクションとか、聴いてくれた人のリアクションとか感じながら。僕以上に思い入れのある人とかも、出てきてるわけじゃないすか。」

岩谷:「ふふふ(笑)。」

五味:「勝手にMV作るやつとか。何枚もレコード買う人とか。そういうの見てたら、ああ、そうか。やっぱそういう聴き方もある、って思いますね。」


―岩谷さんはいかがですか?

岩谷:「そうですね。このアルバム、家の車にずっと置いてあって、2、3枚置いてある中の1個として聴いてたりするんですけど、今ぱっと思ったのは、何か自分が関わったことを早く忘れて聴きたいなっていう。」

五味:「あはは(笑)。」

岩谷:「はは(笑)。」

五味:「客観的に?」

岩谷:「そうそうそう。」

五味:「やっぱエンジニアの人ってさ、自分がミックスとかやるやんか。誰の作品でもいいけど、それが例えば誰かの家に遊びにいったときに、自分がやったやつが流れてきたとするやんか。そんときの情景が蘇ってくんの?録ってたときとか、ミックスのときとか。」

岩谷:「まあ、そうっすね。」

五味:「波形とか蘇ってきたりすんの?」

―ははは(笑)。

岩谷:「(笑)。いや、波形までは・・・。」

五味:「(笑)。」

岩谷:「まあ、前、街の中で聴いたことはありましたね。」

五味:「あ、これあれや、あん時ここにおったな、みたいな?」

岩谷:「ていうより、ここで、どういうバランスで聴こえるんやろ、みたいな感じの。」

―あははは(笑)!

五味:「ははははは(笑)。」

岩谷:「職業病じゃないすけど。」

五味:「それはもう、職業病やろ(笑)。」

岩谷:「やっぱ、条件反射的な感じはまあ、あって。もうちょっと、これこうした方が良かったな、みたいに思うこともあるし。それをとっぱらって、聴きたいなっていう。早く。(笑)」

二人:(笑)

―それって、いつぐらいでそんな感じに聴けるようになるんですか?

岩谷:「わっかんないっすねえ・・・。でも、10年ぐらい経っても、そういう風にしか聴けない作品もあるし。それは思い入れの強い、弱いとかいう話じゃなくて。何かよく分かんないすけど。でも、これに関してはまだ全然。まあ、さっきの兄貴の話じゃないすけど。まだ全然、新しく感じる。」

五味:「そう。ほんまに時間経った気がしないんすよ。」

岩谷:「そうそう。これは本当にそうかな。」

五味:「ツアーも終わったけど、何かずっとこれやってる、そのツアーの続きにいる、みたいな感じするし。ほんま正味、次のアルバムとかもまだ全然出さんでもいいんちゃう?みたいな感じなんすけど。そんなことゆってられないんで。自分達的にも。」

岩谷:「うんうんうん。」

五味:「次どうなんのやろ?みたいなとこにいきたいなっていうのもあるし。ほんまに、今までにアルバム7、8枚か、結構出したんすけど、1番こう長く味の残ってるガムみたいな。」

二人:「あはは(笑)。」

五味:「あるじゃないすか。すぐ味なくなるガムもあるじゃないすか。ずっと味してるなあって、ずっと噛んでるなあ、みたいな(笑)。 」

二人:(笑)

五味:「感じですね。」



“Possibility”

―次のアルバムは『In Dreams』のリリース方法を踏襲しつつ、ネットやSNSや自分の店の周りにあるコミュニティとの距離感が今後テーマになっていくだろうなみたいなことをTwitterでおっしゃってたかと思うんですが、今後どういう風にやっていこうと考えておられますか?

五味:「さっきも言ってた、ずっと気持ち新鮮なままやれるってすごいいい事やと思うんで。だから、この感じで作った下地みたいのは残しつつ、今回リリース方法が結構ネットで話題になったり、取材もそれにまつわるものが多かったんで。次は、それに対しての目新しさはなくなるから。基本のフォーマットをそのままで、で、どうやって興味を持ってもらうか、そのためにやることは何かっていうのをもう一回仕切り直すというか。考えて、出せたらいいなって、思いますね。

よう分からん問題起こして炎上させて、それを取り上げてもらうとかいうことではなくて。ちゃんと、自分がいいと思って作って、この売り方で興味を持ってもらうための入口作りをどこに作るかっていうのが、テーマというか。

ただもう、SNS・・・色々ありますけど、そこに照準合わせてると、何かすごい勢いで変わっていくじゃないすか。」

岩谷:「うんうん。」

五味:「基準はそっちじゃなくて、もっと現場寄りというか。ライブとか、それぞれ店やってたりするんで。そういう現場で、集まってくれる人らのゆってることとか、考え方とか、そういうのに照準合わせて、そっからそれがきっかけで、その後ろにある、まあSNSでもいいし、何でもいいんすけど。ネットでも、口コミでも。

まずは一番自分の近くにいる人と、どういう風にコミュニケーションとるか。繋がって伝えるかみたいなとこを、強くしていくのがいいんじゃないかなっていう風に。それより向こう側の広がりは、もうその人に任せるというか。まずは自分の前にいる人に、ちゃんと伝えるっていうのを、きちっとやっていきたいなっていう感じすかね。」

―過去の取材記事の中で、五味さんが何回か“村”っていう表現を使われていて。

五味:「こういう売り方すると、純度は上がるけど、伝えることに関して閉じた世界になるんじゃないか、って話が出たんですよ。まあ、それはそうやなっと思って、僕も、何かそういうちょっとネガティブな意味合いというか。村社会で生きていきたくないじゃないすか。

でも、その、閉じてるかどうかは分かんないじゃないすか。ちっちゃいコミュニティであっても、開かれたちっちゃいコミュニティもあると思うんで。簡単にそれは村社会とは言えないんじゃないかって、今になって思うというか。ライブに集まった人達と作ったコミュニティがまずあって、それより向こう側の世界ってあると思うんすよね。多分それぞれに。

そこにアクセスできる強さが音楽にあれば、それを村社会って呼ぶ必要ないんじゃないかなっていう、淡い希望というか。人が持ってる背景とかバックグラウンドへの希望というか。そういうのが、最近、ありますね。諦めてないというか。」


―リリースから時間を経て、村というより、村にどんどん人が集まってきて、その村が街になるかもしれないし、もっと違うものになるかもしれないというような。純度が高いものを中心にそれに感動した人が集まってきて、それを広げていきたいと思う流れになってるように思いました。

前回のスプリットインタビューでも思ったことですが、bachoやLOSTAGEのように素晴らしい音楽を作っている人達が面白いことをやろうとしているなと感じて、そういう皆さんの活動を楽しみにしているので、次のアクションも楽しみに思っています。

五味:「曲、ありきですけどね。」

岩谷:「ふふふ。」

五味:「やっぱいい曲が、入ってたら、皆聴きたい。」

―そうですね。

五味:「自分がいいと思ってるだけではもちろん売れないですし、自分がいい、皆がいい、とかってずれてたりするから。ただでも、まず、自分がいいと思ってなかったら良くないんで。」

岩谷:「うんうん。」

五味:「まずは自分。その身近にいる人。友達。どんどん広がっていくけど、まず、自分がいいと思うものを絶対作って、その“いい”を分かってもらうために、“いい”を分かってもらうことにエネルギー使いたいな。まず作った後は。俺は“いい“と思うけど・・・“いい”と思えとかじゃないんすよ。それが、次のアルバムのテーマっちゅうか。・・・まあ、いいと思って作ってましたよね、今までも。(笑)」

二人:「ははは(笑)。」

―でも、作品ってこう、人をこうやって動かすんだなあってすごい思いましたね。

五味:「いや、でも、そうすね。僕もそう思います。基本、レコード会社とか流通とか、メジャーとか、マネジメントとか。そういう間に挟まってるものが今まではあったりしたんすけど、直接いけたから分かったなっていう。伝わったなあ、とか。ありましたもんね、結局は。まあ、今まで僕が分かってなかっただけかもしれないですし。そういうことは、大きいかな、と思いましたね。」

―なるほど。

五味:「そう。ほんまでも、勘違いされたら困るんすけど、このやり方が絶対いいとかじゃないんすよ。それは絶対。これが最高なんで皆やろうぜとか、配信なんかする必要ない、ということではないんすよ、もちろん。こういうやり方もあって、どうですか?みたいな。いいですか?みたいなことをずっとやってるだけなんで。」

―お話を聞いてると、もっと根本的なところで、その活動を見てどう考えてるの?って問われてるような気がしました。ちゃんと自分で考えて動いてる?って言われてるような。だから、表面的なやり方の部分っというよりも、もっと根本的な部分を揺さぶられるというか。このやり方をやろうよって言ってるんじゃなくて、ちゃんと自分で考えてやってごらんって言ってるのかなっていう。

五味:「そういうきっかけになったら、いいですけどね。ま、でもそういうのも後付けで。正味、そこまで考えてないんすよ。」

二人:(笑)

五味:「なんとなくやってる、みたいな。結果オーライで。ってのはあるな。だってこれ、いやー500枚しか売れませんでしたとかって、なってたかもしれない可能性もあるもんな。」

岩谷:「まあ・・・。はは(笑)。」

五味:「あはは(笑)。」

岩谷:「でも今よりは、売れてなかった可能性だってもちろんね。」

五味:「結果、それなりに売れて、話題にもなったから。偉そうにしてますけど、今。」

二人:(笑)

五味:「全然売れてなくてね、死ぬほど在庫抱えてて、レコード作れてないみたいな状況もあったわけですから。結局その、出した結果とかを皆見てるじゃないすか。それをLOSTAGEだから出来たと言われたりすることにしても。」

岩谷:「うんうん。」

五味:「出来たから言えたわけで、500枚しか売れてなかったら話題にもなってないわけですから。」

―そうですね・・・。

五味:「プロセスの方が大事なんで。ま、僕らが今たまたま運が良くてね、こうなってるけど。次、大コケする可能性もはらんでますから。あんま今だから、えらそうなこと言わん方がいい。」

二人:ははは(笑)。

五味:「(笑)。恥ずかしくて過去のインタビューとか読まれへんかもしれん、次のアルバムでた後。」

二人:(笑)

―でも結局リスクがありながらも進んでいく、そういうところが人にすごく影響を与えているのかなあと思いますね。その勇気が出せるってことに影響を受けてる人、多分たくさんいるんじゃないかと思います。

岩谷:「うん。」

五味:「失うもんが別にないですからね、僕らの場合。解散するとかがもう、まずない。まあ、多分ないんですよ。一人、弟やし。もう一人もまあ、ずっと地元に、ライブハウスにいるような奴なんで。今からもう、辞めるとかないから。

もう、やるって決まってるから、別に売れても売れなくても一緒なんすよね。売れたらまあ、小遣い入ってくるしな、って。全然売れんくてもいいし。ライブ出来なくなっても、別に練習だけやっててもいいんで。正味、こうなったらヤバいな、みたいなんがあんまないっちゅうか。背負うリスクもあんまない。ないっていうか、別に何やってもいい、みたいな強みはあるかも。契約があって、期限があってという活動してたら出来ないことでもあると思うんですけどね。」

岩谷:「うん。」

五味:「出さなくても別にいいんで。正味ね、録ったけど出しませんとか、それでもいいじゃないですか、別に。だから、それを自由っていうのか不自由っていうのか分かんないすけど。まあ、何か、うん。悪くないですけど、そういうの。立ち位置っていうんですかね。ほとんどどっちでもいいんすよ、だから、業界の何か色々。」

岩谷:「ははは(笑)。」

―(笑)

五味:「何かね、ニュースの記事になってるような数字の話とか、業界の行く先とか。ま、僕も、調子乗って何か読んで意見とかしたりしてますけど、正味別に全部どうでもいいんすよ。」

岩谷:「あははは(笑)。」

五味:「ははは(笑)。」

―(笑)

五味:「E♭で集まって練習して、やってるだけなんで。たまにライブやったり。」

岩谷:「たまにいい曲が出来て。」

五味:「そうそうそう。出来たから、録音するか、みたいな。近くにスタジオもあるし、エンジニアの人もいるし。(笑)。ね。機材もあるし。いい感じの距離感、保ってるような気はするんですけどね。業界っていうか。しがらみと。」



夢の続きと新しい扉


―じゃあ、最後に次のアルバムのことを教えていただけますか?

五味:「次、だから、どうしようかなっていう。」

岩谷:「そうっすね。それを話し合おうって話をしてたとこですよね。」

五味:「1回ミーティングでもやろうか、みたいな。メンバーと啓士郎くんと4人で。」

―そうなんですね。

五味:「でもやっぱ最近、ちょっと何かうるさいからさ、耳が。音が。」

岩谷:「ああ、ねえ。」

五味:「音がでかいんすよ、僕ら。練習とかね、ライブもそうやし。」

岩谷:「でかいですね。」

五味:「うるさいし、今年で僕と岩城40歳なんすけど。まあ、節目やし。こないだのファンダンゴ7日間ってやったじゃないですか。あれもう、ガーってやったんすけど1週間。まあまあストイックに。これ以上ないな、っていうぐらいやったんすよ、多分。だからこう、1回気持ちリセットして。」

岩谷:「でも結構ビックリしたのが、7日間やるじゃないすか。始める前は、多分なんかどっか具合悪くなったりとか・・・。」

―(笑)

岩谷:「疲労骨折とかするんじゃないかなって。」

―あはは(笑)!

岩谷:「思ってたんすけど、結局何か調子上がりっぱなしのまんま。」

五味:「ふぁーっていったもんな(笑)。」

岩谷:「7日目は僕が見た中で、もう、一番いいライブしてて。」

五味:「あはは(笑)。」

―ええー!そうなんですね。

岩谷:「100回以上僕ライブ見てますけど、1番良かったですね。」

五味:「まあ、でも全体的な雰囲気とかも込みこみで。いい要素がいっぱいあったから。

まあ、あの続きを見んのか、それとも、もう一個ちょっと新しい扉を開くのか、みたいな。」

岩谷:「うんうんうん。」

五味:「それをまず決めた方がいいと思うねんけど。俺、最近、アコギ持ってスタジオ行ってて。」

岩谷:「言うてましたよね。」

五味:「僕がアコギ弾いて。岩城もちょっと抑えめに叩いたりとかして。まあ、単純に音量だけの問題じゃないすけど、テンションが。」

岩城:「まあね、楽器変わると演奏とか出てくるものも変わる・・・。」

五味:「曲作りのこう、雰囲気を一回違うベクトルでやって。曲の良し悪しはまあ、今までとね、一緒というか。ジャッジは自分らでやるんすけど。何かちょっとやったことないこととかも、やってみたいなっていう感じですね。」

―なるほど。

五味:「まあでも、求められてるもんとかもあるかもしれないから。」

岩谷:「でも別にどっちか選ばなくてもね。両方。」

五味:「結局バランスとって何か、バランスとったみたいな感じになるのかもしれない。」

二人:(笑)

五味:「でも一番でかいのは、『In Dreams』が出たときは弟がね、まだ店始めてなかったんすよ。」

岩谷:「ああ。そっかそっか。」

五味:「これが出てから、店を始めたから。前は、練習夜の9時~12時にやってたんすよ。皆仕事終わってから集まって。あいつが店始めてから、仕事夜なって、練習が朝の10時~昼の1時までになったんすよ。曲作ってる時間帯がずれたんすね。12時間くらい。だからね、多分その空気感がでる。」

―確かに。

五味:「朝からね、そんなでかい音聴きたくないじゃないですか。」

―(笑)

岩谷:「まあ、そうっすね。(笑)」

五味:「ほんまにしんどいすよ、朝集まって。僕らはそもそも生活感を出すみたいなのも、バンドのまあキャラクターというか。作ってる時間帯が、集まる時間帯が変わったらやっぱ、できる曲も変わるし。生活環境に左右されやすいと思う。そういうの、出てくるんじゃないかなって。ちょっと落ち着いたというか。日の光のあたるような。アルバムになったらいいな、みたいなのは何となくありますけどね。

年相応のものというか、音楽と一緒に年とっていく、みたいなの、いいじゃないですか。無理して10代のときと同じ音楽性でやる必要ないし。今の自分がやりたい音楽をやるだけで。それを自分がいいと思ってたら、いいと分かってもらえるようにね。皆と一緒に考えたりとか、していきたいですけどね。」



[SPECIAL INTERVIEW : KEISHIRO IWATANI × TAKAHISA GOMI] 


 

[取材協力] Studio MORG http://morg.jp/                  


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【Release】

LOSTAGE / In Dreams ( VINYL ) 

価格:3,800円(税込) 

※ダウンロードクーポンは付属しません。

収録曲

SIDE ● 1.さよならおもいでよ 2.ガス 3.窓

SIDE ●● 1.ポケットの中で 2.REM

SIDE ●●● 1.泡沫の 2.戦争 3.I told.

SIDE ●●●● 1.僕のものになれ 2. Shoeshine Man


THROAT RECORDS


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2年後の『In Dreams』。


そこに、どんな、夢を見た?


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